<第2部>『スーパーヒロイン危機一髪』  (作 ベスト氏)

  第6章


中谷佳乃は夢を見ていた。それは高校時代の通学途中の電車の中だった。
痴漢にあった時の事が夢に出てきたのだ。
痴漢は大学生の男だった。
そっと近づき佳乃のスカートの中に手を入れてきたのだった。
だが、数秒後、痴漢の大学生はあごを押さえ、口から血を出しながら床に倒れ込んだ。
佳乃の右の拳があごを砕いたのだった。
その大学生は痴漢の現行犯で逮捕された。
ところが、夢の中でまたその男が現れ、制服姿の佳乃の胸を触ってくるのだ。
(懲りない野郎だ!)と殴ろうとしたが、手が動かない。
男は大胆にもセーラー服の中に手を入れ、ブラの上から乳房を揉みだしたのだ。
(てめえ、ふざけんな!)と喋ろうとしたが、男の拳が口の中に入ってきて、言葉が出せない。
手も足も動かず、声も出せない。電車の廻りの人間がこっちを見て笑っている。
大学生の顔を睨んでいるうちに、男の顔がゆり子のアシスタントのベストに見え出してきた。
(この野郎!なめんなよ!)そう叫んだ瞬間、眼が覚めた。

顔の真下で、ベストが胡座を掻きふざけた顔で見上げながら、両手で佳乃のバストをブラジャーの上から愛撫していた。
咄嗟に蹴りを入れようとしたが、身体が動かない。直ぐに自分が縛られているとわかった。そして口にも硬質な棒のような物を噛まされていると気付いた。
「あ!佳乃サン。目が覚められましたか?」
そう声をかけられて、はっきりと覚醒した。
咄嗟に身体を反転しながら、ベストの手を振り解いた。
振り向いたほうには大きな鏡があり、今自分がどんな姿で緊縛されているかがわかった。それは、2日前にゆり子から聞かされたポーズにそっくりであった。
すると後ろから女の声が聞こえた。
「素敵な格好でしょ?気に入っていただけたかしら?中谷佳乃さん!それとも「パープル・キャット」さんとお呼びすべきかしら?ふふふ」
声の方に振り返ると、すぐ目の前の大きなソファに身を委ねて、ワイングラスを持った飛びっきりの美人が座っている。
30歳くらいに見える女性で、まるで女優のように優雅で洗練された美しさのオーラを身体中から発散させている凄い美人だ。
カールのかかった黒髪に白いノースリーブシャツにフレアミニスカート姿で、綺麗な足を組みながら、唇の両端を上に上げて微笑んでいる。

気を失う前に佳乃が見た女性である。
声を聞いて電話をかけて来た瞳と名乗る女だとわかった。
そして、瞳のソファの足元の床に胡座を掻いた状態で縛られたゆり子がいた。
ゆり子は必死に目を覚ました佳乃に向かって何かを言おうとしているが、厳しい猿轡を噛まされており、小さな呻き声が聞こえるだけだった。
その姿はまるで猿回しの小猿が親方に折檻されるために小突かれているような屈辱的な姿に見えた。
ゆり子の綺麗な顔には、厳しい結びコブ噛ませ猿轡が噛まされたままである。
口は開かされたままで、頬が歪み、キュートで可愛いゆり子の顔が滑稽なくらい変形させられているのだ。
ピンクのブラジャーとショーツ姿のまま胡座縛りという若い女性にとって恥辱的な姿でぶざまに縛られ、股間には数センチ間隔で結びコブを作った股縄が食い込むように噛まされている。
化粧は崩れ全身に油汗が光っており、かなり憔悴しているように見える。
長い時間折檻されたことがうかがえるのだ。
自分の無二の親友のあまりに変わり果てた姿を見せ付けられ、佳乃に怒りの表情が浮き上がってきた。
「親友の涙の再会ね。ふふ、身の危険を顧みず救出に来た麗しき友情にはうっとりきたわ!ほほほほ」
瞳の挑発的な言葉と、ゆり子の屈辱的な姿に佳乃は顔が真っ赤になる怒りが込み上げてきた。恐ろしいほどの眼光で瞳を睨みつけた。
「あら!悔しいのかしら!ふふ」そう言うと、ソファから瞳は立ち上がり、佳乃の方に近づき、佳乃の顎を細くて白い綺麗な指先でグイッと持ち上げ、話出した。
「ゆり子ちゃんにも言って聞かせたけど、そんな生意気な眼を、私の前では今後2度とさえないわよ。覚えてらっしゃい。いいこと。いい子ちゃんになるまできっちりしつけてあげるわ!覚悟なさい。今日一日、ゆり子ちゃんもしつけてあげたら、随分いい子になってよ!ほら、今から「ワン」って鳴かせてみせるわ。」
瞳はゆり子の前にしゃがみ込むとゆり子に話し掛けた。
「ほら、お友達の前で子犬みたいにクンクン言って聞かせてあげるのよ」
そう言うと、縛られたゆり子を床に横倒しにさせた。
胡座縛りのゆり子はバランスを崩して、床に倒れた。
座禅転がしの姿で横たわったゆり子の股間は、立ち縛りの佳乃の目の前で丸見えになり、小さなハイレグのピンクのショーツが可愛そうなくらい股間に食い込んでいた。
その上から、まるで秘部を隠すかのようにコブ付き股縄が二重に食い込んでおり、憐れな親友の姿を見せつけた。
「そーれ!」と言って、右手が股間の股縄をクイックイッと引っ張ると、ゆり子はたまらず、「ウウウーン!」と呻き声をあげた。
鍛え上げられ、贅肉のまったくないゆり子の太股の筋肉のすじがピクピクと動くのが、瞳には面白いらしい。
「ほほほほほ!相変わらずいい声で鳴くわ!」勝ち誇ったように瞳が笑う。
「ねえ、ゆり子ちゃん。まるでメス犬がお尻の穴を丸出しにして、オス犬を誘っているようよ!憐れな姿ね!。ホホホ。佳乃さんももう直ぐしたら、同じ格好にしてあげるわよ!
お尻の毛を丸出しにして、佳乃ちゃんも、クンクン言って鳴くのよ!クツワを噛まされた子犬の鳴き競う大会になるわね。楽しみだわ!。」

部屋にベストの他に、縛り屋の男2人が、ベストの指示に従って、カメラを廻している。
1台は二人の美女を代わる代わるいたぶる瞳の優雅な表情を、1台は、屈辱的な座禅転がしにされたゆり子の下半身を、そしてベストの手には、真赤な顔で怒りに震える佳乃の表情を追うカメラが廻っていたのである。

そこで、瞳は再びソファに戻り、高級そうなワイングラスを持ち直しながら、佳乃に向って再び話出したのである。
「ねえ、佳乃ちゃん!もう日本ともお別れでしょうから、正直な話をしてあげるわ!。本当にあなたの親友のこのゆり子ちゃんって大した玉よ!これだけ私が折檻しても、ネガの在りかを話そうとしなかったもの!首を縦に振らないのよ。あなたを売ったのは別の人間よ。ねえ、ネガの事、私達にバラしたの誰だと思う?ふふふ。…………実はあなたの上司の片平いづみって言う女なのよ!どお?驚いた?」
佳乃は思わぬ話に目を見開いたまま見つめ返している。
今日の夜、佳乃の報告を聞いた後、直ぐに警察庁刑事局長であるボスに、連絡を取り、仲間に入れて欲しい。お金と出世を要求してきたのだ、と聞かせた。
呆然と聞く佳乃の反応に満足するかのように瞳が話を続けた。
「その片平いづみって女も馬鹿な女よ!。ふふ。私達のボスが本当に警察官の裏切りモノを信用するはずがないって事に気付かないの。仲間に入ったら好い暮らしが出来るとでも思っているのよ。可哀想に!もう直ぐしたら、この屋敷にボスが居ると思って、ノコノコネガを持って現われるわ。ネガを取り上げたら、捕まえて、外国に売り飛ばすのよ!まあ、ロシアは無理でも、中東辺りならいい値で売れるわ。年増だけど、中々の美人って聞くしね!……あ!、そうそう、佳乃ちゃんとゆり子ちゃんは中東じゃないのよ。ロ・シ・ア!
ウフ!聞いたことあるでしょ、ロシアの石油王でとってもハンサムな「ア・ブラひも・ビッチ」さんという飛んでもないお金持ちのこと。その方の持ち物になるのよ、2人とも!
凄い金額できっと売れるわ。正直,私でも嫉妬するくらい2人とも魅力的ですもの!。
特に佳乃ちゃんの身体みてビックリしたわ。まるでハリウッドのアクション映画に出てくる美人女優だって真っ青なくらい美しいもの!素敵な身体ね!あとはどうやってあなた達を屈服させるかよ!お手とお回りを躾なきゃならないんですもの!」
そう言うと、もう一度立ちあがり、佳乃に近づき、ブラの上から乳房を撫で廻した。
それから、盛りあがった上胸部の白いブラジャーのストラップと小さなアジャスターを指でなぞりながら話かけた。
「どお?今の気持ち!?。フフ。口惜しい?何とか言ってみなさいよ!。天下の「パープル・キャット様」が猿轡で顔が歪んでマヌケな顔をさせられてるのよ!まったく可笑しな顔よ!ほほほ!。竹のクツワだったら少しは声が出せるでしょ?悔しいって言って御覧なさい!口に詰め物しなかったのは、あなたとお話ししたかったからなのよ!ほほほ。」
確かに少し太めの竹を噛まされているとはいえ、詰め物をされていない舌は微かに動くし、声を発すれば、不明瞭だが、くぐもった声が出るはずだった。
しかし、佳乃はベストと瞳が猿轡フェチの変質者だと悟っていた。
この変質達はここで、くぐもった声を出す事を期待し、その声を聞いて一層喜ぶ事を感じ取ったのだ。
口惜しそうな呻き声を出す事が、こいつら変質者達を悦ばすことになるのが,直感的にわかったのだ。
佳乃は縛られている事を悟ってから全く身悶えせずに、唯、竹轡を強く噛み縛っているだけであった。
佳乃はグッと瞳を必死に睨みつけた。
予想以上の反抗的態度に少しムッとした瞳は、口調が厳しくなり「ほら!、何か言いなさいよ!私の命令が聞けないの!」
と言うと、前屈みに吊るされて、少し俯き加減の佳乃のあごをグッと持ち上げて、瞳も睨みつけた。
傍で見ていたベストには、この時2人の女の間に激しい火花が音を立てたように見えた。勝気な女同士の「眼差しのバトル」を息を殺して撮影していた。
佳乃は、あごを持たれた瞳の指を振りほどくかのように、首を振って、顔を背けた。
しかし、しつこく瞳は、もう一度佳乃のあごを強い力で持ち返して、「聞こえないの!」と言って自分に向けさせたのだ。
そして、佳乃は今度は目線を外し、反抗した。
佳乃の眼には恐ろしいほどの力がこもっている。
ベストはきっと、瞳の平手打ちがあると思った。
それがこれまでの瞳の調教方法だと思っていたからだ。
しかし、3秒後、瞳は佳乃のあごから手を離すと、何かを思いついたように、微かに微笑み、「それじゃ、決して話せないようにしてあげるわ!生け捕りにされた自分の立場を解からせてあげる!。あなたには、死ぬ自由も与えられてないってことをきっちり教えてあげるわね!」
と話し、そして、ベストに向ってこう言ったのだ。
「ベスト!ブリーフを脱ぎなさい!」